触れることが叶わないなら、
せめてこの目にはっきりと映してほしい。

そう願うことはわがままなのかな……。




UNCHAINED MELODY HAS...



 静けさの中で、時を刻む音だけが規則正しく空気を弾く。
 季節は晩秋。
 闇に沈んだ九条の街。
 目に映るその街の灯が、しんしんと夜気に震えていた。
 見上げた夜空で星たちも震えている。
「空の色が濃い……明日の朝も寒そうだなあ……」
 寿人はつぶやくと、外へ乗り出していた身を部屋のうちへと引き戻し、苦笑した。
 苦笑の理由は明日の気象を思ってではない。明日のことを考えてしまった自分自身にだ。

 ……今は明日のことより今日のこと。そうだろ? 寿人。

 閉じられた窓ガラスは外に広がる濃紺の世界を四角く切り取り、写し絵のようにこちらの世界を浮かび上がらせる。そこに映り込んだ自分の顔へ息を吹きかけると、寿人はベッドの上で膝を抱えた。
 ロフトになったここからは、暖色の灯りに照らされた自分の部屋を手すり越しに見下ろせる。
 窓際に置かれたウッドデスク。
 オールドローズに染まったカーテン。
 揃いの色のソファ。
 その足元にオフホワイトの毛足の長い円形カーペット。

 ……色だけはあったかそうだなあ。

 皮肉屋を気取ってみたが、やっぱり自分には似合わないか、と再び頬を苦笑に染めた。
 肩越しに見やった窓に、振り返った自分の顔が映っている。いつからこんな苦笑が似合うようになったのだろうと考えて、そっと窓ガラスに手を添え、目を閉じる。
 また同じようにそっと目蓋を上げれば、そこに見えたのはただの一人の少年だ。色も触れ心地も柔らかな髪の下にのぞく、どこか愛嬌のある目。その目でじっとこちらを見つめている。

 ……君は寿人? それとも――

 足元でコン、とノックの音が一度だけ響いた。
「ヒサ、まだ起きてるのか?」
 聞こえてきたのは、兄の声。
 そのまま部屋の中央へと歩み入った匡人( まさと )がこちらを見上げ、微笑む。手すり越しに笑顔を返せば、兄は一度窓際の机へと視線をやり、このロフトに続く梯子( はしご )へ手をかけた。ギシ、と軋む音が少しずつ近づいてくる。
「眠れないのか?」
 上ってきた兄は同じベッドの端に腰かけた。
 寿人は膝を抱えたまま匡人の顔を見上げると、す、とまなざしを再び静かな夜空へと滑らせる。
「眠れないんじゃなくて、眠らないんだよ」
 ちりり、と鈴の音を思わせる星の瞬きを見つめ、ゆっくりと言葉を紡ぎ足した。
「……まだね」
「まだ、か……」
 匡人が同じ言葉を口の中で転がす。
 と、
「……ヒサ、あの袋」
 兄の目が何かを見つけたらしい。
 振り向いた寿人はその視線の先を追い、ああ、とうなずいた。
 それはソファに置かれた、まだ開かれていない小さな包み。
「CDだって。誕生日プレゼントに後輩からもらったんだよ」
「後輩って、あの写真に写ってた子か」
 一度だけ見せたことのある写真。それをすぐに思い当てたのか、匡人も小さくうなずいた。
「そう、遠藤っていうんだ……」
 寿人は膝を抱え直すと、そのプレゼントを渡されたときのことを思い返す。
 知らず、くす、と小さな笑いが口から漏れた。

『え、と、綾井先輩が何かを欲しがってるのって全然想像できなかったんで、これくらいしか用意できなかったんですけど……あ! で、でもこれすごくいい曲なんです! イギリスの人なんですけど……俺の大好きな音なので、綾井先輩にも聴いてもらえたらと思って……』

 いつもと変わらない帰り道。
 いつもの別れ道。
 薄闇と、公園の灯りがぼんやりと降らす光とが混ざり合った、その場所。
 細い銀色のリボンで飾られた包みを差し出しながら、反対の手でしきりに前髪を引っかいていた一真。
 自分を見上げるその大きな瞳が、ことさら健気に映ったものだった。

 ……あいつのことだから、きっと、すごく一生懸命考えたんだろうなあ。

 反対に、相手の誕生日に自分が贈った物は、なんでもないアイスケーキと、もらいもののキーホルダーだけだったというのに。
「匡兄、俺さ、何かを欲しがってるところが想像できないって言われたよ」
「…………」
「匡兄?」
「……ヒサが欲しがってるものなんて、ひとつだけだもんな」
 匡人がまるで独り言のような調子でつぶやいた。
 欲しいものがあまりにはっきりしているから、逆に他人にはそれが見えないんだ、と。
 兄の言葉に寿人は小首を傾げてみせる。
「どういうことだかよくわからないよ」
 無邪気に微笑んだつもりが、相手には受け取ってもらえないらしい。代わりに、
「俺の前でとぼける必要も意味もないだろ。もう子どもじゃないんだから」
 そんな言葉をつき返された。
 寿人は抱えた膝へ視線を落とすと、その足を片方ベッドの上へ投げ出す。
「……まだ14歳だもん。子どもだよ、俺」
「14くらいのとき、俺は早く大人になりたかったものだけどな」
 ギ、とベッドの軋む音に顔を上げれば、いつの間にやら兄は足元に敷かれたカーペットの上で落ち着いていた。そんな相手へ、ぽつりつぶやく。
「そりゃ、匡兄には羽があるから……」
「羽?」
 訊き返す兄には応じず、寿人は再び星空へと視線をめぐらせた。

 ……大人になりたくないわけじゃない。
 明日の俺なら匡兄と一緒に笑ってるよ。
 でも……

 今日は、子どもでいたい。
 今は、子どもでいさせてほしい。

 そっと触れた窓ガラスは先ほどよりも冷えていた。
 四角い世界が、しんしんと冷えている。
「……ヒサ」
 ぽつ、と名前を呼ばれた。
 振り返ると、悪戯な笑みをほんのりたたえた表情で匡人が腕時計を顔の横に掲げている。
「ほら、見てみろ」
「なに?」
「いいから」
 腕を引かれ、ベッドから降りた。そうして、隣に並ぶ兄の時計を覗き込む。
 その文字盤に刻まれた時は午後11時28分。
「11月28日、午後11時28分……な? おめでたいだろ、ヒサ」
 寿人はひょい、と肩をすくめて兄を見返した。
「匡兄に言われると、本当におめでたいような気分になるなあ……」
「そりゃあ、そうだろ。俺はヒサよりも寿人のことを知っている人間だ」
「…………」
「な」
 腕を下ろし、匡人が満面の笑みを浮かべた。
「……うん」
 小さな窓から入り込んでくる夜の色と、この足元で揺れている柔らかな灯りの色とが混ざり合う中で、兄の笑顔は温もりに満ちている。この温もりに、存在の確かさに、幼い頃から何度救われてきたことだろう。

『どうした、ヒサ。寂しいことでもあったのか』

 誰もいない裏庭で、誰もいないバルコニーで、独りで膝を抱えていると、いつのまにかそばにいて髪をなでてくれた。
 耳に優しかったあの頃の声音、言葉が今もまた聞こえてくるようだった。
「……匡兄」
「ん?」
「……ううん、やっぱりなんでもない」
 言いかけて、けれど飲み込んだ言葉はいったいなんだったろう。形にできなかった気持ちは、まだ心の中に残っている。それを他人事のように覗いているもう一人の自分が、笑っている。

 今日は何の日だっけ?
 そう、誕生日だ。

 ひとつ年を重ね、
 ひとつ足を踏み出し、
 ひとつ今までを振り返る日。

 それなのに、まるで幼い頃へと時が逆流していくかのように、今はただ目の前の大きな手のひらに甘えてみたいと思う。
 言葉なく見上げれば、ふわりとその手がこちらの髪に触れた。
「まだ何も言ってないのに」
「俺がさっき言っただろ。俺は……」

 俺はヒサよりも寿人のことを知っている人間だって――。

 もう子どもじゃないと言ってくれたのは確かに目の前にいる同じ相手なのに、こんな幼稚な願いもまた、なんでもない笑顔で受け入れてくれる。
「……ありがと、匡兄」
「どういたしまして」
 大きな手のひらが、離れていく。
 一瞬の温もり。
 温かいけれど、それは大事なものが急速にどこかへさらわれていくような心地にも少し似ていた。寿人は軽く唇を噛んで、自分の部屋を見下ろす。
 壁に掛けられた時計がメトロノームのように規則正しい音を弾かせ、ここに広がる静寂を支配する。その音は決して嫌いではなかった。しかし、今だけは進む針が止まればいいのに、と思う。
 止めたなら、せめてこの部屋だけは時間の流れも変わるだろうか。
 今日が、終わらずにいてくれるだろうか。
 万年筆が一本転がっているだけの机を見下ろして、わずかに胸が痛む。
 去年のこの時には万年筆とともにあったものが、今はない。いや、今年もあると信じていたものが、まだここにない。
 時計は、もうあと三十分で新たな一日を作り始めようとしているのに。

 ……まだ、行かないでほしいのに。

 知らず口から漏れた小さなため息が、手すりをつかむ指先の力も一緒に吐き出してしまったようだ。ずり落ちた手でもう一度膝を強く抱え直したとき、すぐ隣の兄の口から大きなあくびが飛び出してきた。つられたように、この口からもあくびの弟が顔を出す。
「ふ、ぁ……」
「眠くなったか?」
「ううん……匡兄のあくびが俺にうつったみたい」
「……それが子どもじゃない証だよ、ヒサ」
「え?」
 思いもよらない言葉に寿人は目をきょとん、とさせて兄を見上げた。
「それって、あくび、が?」
「そうだ」
「でも、子どもだってあくびはするよ」
「あくびをする、しないじゃなくて、あくびがうつるかどうか、が証なんだよ」
「……じゃ、子どもにはあくびがうつらないってこと?」
 そう、と匡人が深くうなずく。

 それは自意識の領域。
 自己と他者をそれとはっきり区別することで、他者の行動をそれとしっかり認識することで、初めてあくびがうつるようになる。明確な定義とも境界とも知れないが、「あくびがうつる」、そのことがひとつの自我の成長の目安となることは言ってもいいだろう。

 おそらくどこかのテレビ番組か、偶然目にした本からの受け売りだと思われる兄の言葉だが、寿人は素直に相づちを打った。興味深い話だと、思った。
「じゃあさ、あくびがうつるようになるのって、何歳くらいから?」
「はっきり何歳とは俺には言えないけど、幼稚園くらいじゃまだうつらないみたいだな。7、8歳かそこらじゃないか?」
「へえ……」
「おっと、これは俺の勝手な憶測だから鵜呑みにするなよ」
「へへっ、わかってるよ。匡兄はそんなに博学じゃないって知ってるもん、俺」
「言ったな、こいつ」
 大きな手のひらが今度はわしわしと力強く頭をなでてくれる。
 乱れた髪もそのままに、寿人は再び離れゆく兄の手をじっと見つめた。
「匡兄……手、見せて」
「手? ほら」
「反対の手は?」
「え?」
 怪訝な顔をして見せながらも、匡人の両の手のひらが差し出された。
 自分のそれよりも大きな兄の手のひらを見下ろし、寿人はぽつ、とつぶやいた。
「空っぽだ……」
「ヒサ?」
「じゃ、ポケットの中は? あ、そのシャツのおなかに隠してるんだ。そうだろ?」
「は? ちょ、ヒサ?」
 唐突に服の中へ手を伸ばしてくる弟に、さすがの兄も面食らうらしい。目を白黒させて細い体を引き剥がすと、じっとその顔を覗き込む。
「ヒサ? どうした」
 寿人はまっすぐに見つめ返す。
「どうしたもこうしたもないよ。匡兄だってわかってるだろ。今日は……」
「…………」
「今日は、俺の誕生日なんだ……だから、俺に渡さなきゃいけないもの、あるだろ?」
「…………」
「それとも、焦らして俺のことからかってるの?」

 ……それなら、それでもいいけどさ。

 匡人がこの部屋に入ってきてからずっと、いつ渡してくれるんだろう、と落ち着かなかった。言葉にはしなくとも自分の態度で相手には伝わっていたはずだ。自分が何を待っているのか、わかっていたはずだ。その表情を楽しんでいたというのなら、もう充分すぎるくらい楽しんだだろう。
「匡兄」
 けれど、返ってきたのは望まない沈黙だった。
「…………」
「まさ――」
「ないよ」
「…………え……?」
 返ってきたのは、望まない事実だった。
「渡せるものは、何もない…………届いてないんだ。彼女からの手紙……俺だって、気にして何度もポストは覗いてきたけど」
「……………………そ、う……」
 この口からこぼれた言葉は、それだけだった。
 匡人の顔から足元の部屋へと視線を移す。
 灯りの下で、机の上に置かれた万年筆がきらりと光を跳ね返していた。

 毎年、誕生日に必ず届く手紙。
 それが、今年はまだ届かない。

 赤と青のラインが示す航空便。
 空が繋いでくれる彼女と自分。
 離れているせいで触れることができない自分に、唯一その温もりを形で表してくれる一通の手紙。
 それが、まだ届かない。
 すぐに返事を書けるよう、いつも万年筆を机に置いて待っているのに。

 ……今年は使わないで終わっちゃうのかな。

 目蓋を下ろし、ひとつ深い呼吸をしてからゆっくりとその目を開ける。それでも、視界に映るものは何も変わらない。
 いや、振り返って見上げた窓の向こうが、流れる川のようにゆらりとにじんでいた。

 ……ああ、さっきのあくびのせいだ。

 そう、にじんで見えるのは、あくびで染み出した雫のせい。
 この瞳が光って見えるなら、それはきっと夜空からこぼれた星のせい。
「ヒサ……」
「平気だよ、匡兄。匡兄だって言ってただろ。俺はもう子どもじゃないんだ。だから、平気。別に寂しくはないよ」
 自分はあくびもうつらない子どもじゃない。だから、欲しいものがもらえないくらいで泣いたりしない。我慢できる強さくらい、この手の中にある。

 でも、少し嘘をついた。
 本当は思っている。
 子どもから大人へと移ろい行く自分。
 それがゆえに、もう彼女からの手紙が届かないのだとしたら。

 ……子どもでいられないって、少し淋しい。

「届くものがあろうと、なかろうと、何も変わらないよ。彼女にとっても、おまえにとっても……それから……」
 兄の言葉が背中から優しく自分を包み込む。
「……それから、俺たちにとっても」
「うん、わかってる……」
「ヒサ」
「なに?」
「誕生日おめでとう」
「……うん、ありがとう」
 おやすみ、とうなずき匡人が腰を上げた。ゆっくりと梯子へ足をかけ、ギ、と軋む音と一緒に少しずつその気配も遠ざかる。
「匡兄……」
「ん?」
「……父さん、は?」
「明日の朝には帰ってるはずだよ。今夜ヒサと一緒に食事できないのを残念がってた」
 ドアが閉められると、とたんに静寂が部屋のうちに満ちた。
 コチコチ、と時計の奏でる落ち着いた響きが、体の奥からふわりとあくびを引き寄せる。誘われるまま、ベッドに上った。
「……眠い」
 静かな心地だった。
 今、目を閉じれば、もしかしたら極上の眠りが待っているかもしれない。素敵な夢が見られるかもしれない。そんな穏やかな予感がそっと湧いてくる。
 でも、この日が終わるまでは眠れない。起きていたい。

 一年にただ一度の、この日だからこそ。

 時が生まれ変わるまで、残り十分少々。それまでに、あと何回あくびをするだろう。そんなことを思って、またあくびがぷかりとひとつ、浮かんでくる。
 今そばにいてくれたなら、彼女にもあくびがうつるだろうか。
 目をこすりこすり、冴え冴えと輝く夜空を見上げる。
「このあくび、あの月が届けてくれないかなあ……」
 彼女の髪も月の色をしていた。注ぐ銀の月影ではない。夜空で地上を見守る月そのもの。太陽の光を映した、その黄金色。柔らかで、触れるたびに甘い香りがした。

 ……よく似てるって、言われたね。

 そう言われるのが、本当にうれしかった。
 人から言われて一番うれしい言葉が、きっとそれだった。
「あ、でも今は月の裏側だ」
 彼女の街は見上げた月の裏側。街を照らしているのは、今は日影。真昼の白い月は何を見下ろしているんだろう。

 彼女も今、同じ空を見上げているだろうか。
 その空はどんな色をしている?

 細く、窓を開けた。この頬をなでる冷えた夜気と入れ替わるように、暖色の灯りに染められた部屋の空気が夜空へと細く昇っていく。月影の梯子を伝って、あの雲の上まで昇っていく。
「そっちは、もう冬だね……」
 こちらよりも早い冬の訪れは、どんな音だった?

 そっと、口ずさむ。


   
Or would I were a little burnish’d apple
   (もしわたしが磨かれた小さなりんごの実だったなら)

   
For you to pluck me, gliding by so cold,
   (どんなに季節が流れても、あなたに摘み取ってもらいたい)

   
While sun and shade your robe of lawn will dapple,
   (まとうローブに揺れてまだらを描く木漏れ日の中)

   
Your robe of lawn, and you hair’s spun gold.
   (金糸で紡がれた美しい髪のあなたに)


「あんまり繰り返し聴かされたから、いまだに覚えてるよ」
 冷えた窓ガラスに額を押しつける。それでも、この口はよどみなくその歌を紡ぎ続ける。
 幼い頃からこの耳に、この心に響いて沁み込んだ一つの歌。


 『
Irish Love Song

   
Yea, would to God I were among the roses
   (そう、もしわたしが一輪の野バラだったなら)

   
That lean to kiss you as you float between,
   (ふわり舞い歩くあなたに身をかがめてキスしたい)

   
While on the lowest branch a bud uncloses,
   (すぐそばの芽を開いて、あなたに触れていたい)

   
A bud uncloses, to touch you, queen.
   (触れていたい、あなたに)

   
Nay, since you will not love――――
   (いや、もしわたしを愛してくれないのなら――)


 繊細な旋律の糸が、ふとそこで途切れる。
 紡がれていた言葉が、解けだす。

「……
Are you there?」(……俺の声、聞こえる?)


 ねえ、

Iris (アイリス)


 声には出さず、一つの名前をそっとこの唇で象( かたど )った。



「…………
I love you so ……」



 せめて夢の中なら、あなたに会えるかな。
 ねえ、



 
Mum( お母さん )――





 綾井寿人、14歳。

 堕ちていく先は、夢の中。
 胸に抱くは、夜空の月と解けた歌。

 その微笑みに、
 どうか幾千の祝福を――。

















Nay, since you will not love,
(もし、愛してくれないのなら)

Would I were growing, a happy daisy,
in the garden path,

(僕は庭の小道に咲くヒナギクになろう)

That so your silver foot might press me going,
(だから、あなたのその銀色の靴で踏み潰してほしい)

Might press me going even unto death.
(僕が、枯れて散るそのときまで)


End.

※『 Irish Love Song 』 作曲者不明・作詞 Katherine Tynan Hinkson
(サイト内の日本語訳はチコリによる訳です)

ほか4人のバースデーとは打って変わって、切ない夜のお話となりました。
これをアップした現在、本編の方でまだ寿人くんのイロイロが掘り下げられていないので、ちょっと迷ったんですが、お兄ちゃんの描写は一切省きました(同じ理由で、プロフィールの方もまだお顔を出してません)。
あ、本文中に「さびしい」の漢字表記が二種類ありますが、ケアレスミスではありません、と一応書いておくことにしますね(*'-'*)

ところで、寿人くんの部屋の構造、文章だけで想像できたでしょうか……。
チコリはこんな部屋に住みたいです。笑









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