365日、毎日が特別。
だけど、
一年にたった一度訪れるこの日は、もっとトクベツなんだ――。




     KALEIDOSCOPE



 薄闇の中、小さな振動音に龍太は目を覚ました。
 音の正体は枕元に置かれた携帯電話だ。それを手に取れば、開いた画面の明るさで部屋のうちがぼんやりと照らされる。
 ベッドの脇に据えられた机の上からお気に入りのメガネをつかまえ、その画面に並ぶ数字を確認する。

     SAT 7/6 23:50

「あと10分……」
 逸( はや )る気持ちを抑えきれずにつぶやけば、口からこぼれたワクワクが笑みとなって顔中に広がっていく。
 パジャマにしているチェック柄のショートパンツを脱ぎ捨て、あらかじめ用意しておいたジーンズに足を通していると、小さな光が窓の向こうで明滅していることに気づいた。
 龍太は急いで着替えを済ますと、こちらもあらかじめ用意しておいたスニーカーを片手に、一度は降りたベッドの上へ舞い戻る。そうしてカラカラとその窓を引き開けた。
 さわ、と夜風が頬をなでた。
 季節はまだ梅雨と初夏の狭間で迷っている。だが、今夜くらいは言い切ってもいいだろう。
 外は澄んだ初夏の晩。
 そこに佇むひとつの人影を見つけ、龍太はそっと声をかける。
「今行くね、恋( れん )ちゃん」
「気をつけろよ」
 外灯が降らす光の粒子は、見慣れてるはずの幼なじみの顔をほんの少し変えてみせる。いつもは見上げるその顔を、今は見下ろしてるから、だろうか。
 そんな些細な瞬間にも、とくん、と胸が高鳴る。

 ……今日は、トクベツな夜。

「どうした? 龍ちゃん。降りられない?」
 小首を傾げてこちらを見上げる恋次が、手に持っていたペンライトをかざした。
 細く闇を切り裂くように、淡い青の光の道ができあがる。その先に映し出されたのは、たくましい木の幹から伸びた枝。
 龍太は窓枠に一度腰を預けると、手に持ったままのスニーカーへ足を通してから、思い切り良くその枝へと腕を伸ばす。
 一度この手につかんだら、あとは重力に身を任せればいい。落ち着く先は、温かい腕の中と決まっているから。
「脱出成功」
 抱き留めてくれた相手を満開の笑顔で見下ろすと、しかし、返ってきたのは苦笑顔だった。
「来年からは違う方法を考えたほうがいいかもな、龍ちゃん」
 柔らかな土の上にそっと足をつき、今度はその苦笑顔をいつものように見上げる。
「なんで? 恋ちゃん」
「今、けっこうしんどかったぞ……」
「重かった?」
「うん、ちょっとね…………いくら小柄でも龍ちゃんは男だからさ」
 思いのほか衝撃が響いたらしい。恋次が苦笑を頬に張りつかせたまま、腰をしきりにさすっている。反対の手がすっと顔に近づいてきたかと思うと、慣れた調子で鼻の上の曲がったメガネを直してくれた。
「それに、この枝、もうすぐ伐( き )られるみたいだよ」
 恋次の口からこぼれた思わぬ言葉に、龍太は目を見張る。
「え?」
「昨日、うちに出入りしてる庭師さんが言ってた。沖本さんとこの奥さんに頼まれてるんだ≠チて」
「母さんが?」
「うん」
 うなずいて、恋次がそのしなやかでたくましい枝を眺めやる。
 連なった楕円形の緑の葉を夜風にそよがせ、ただ無言でそこに在る槐( えんじゅ )の樹。
「こうやって龍ちゃんが簡単に出入りできるってことは、外の人間だって入れちゃうってことだろ。こんなふうに窓のそばに足場になるような木があるのは無用心なんだよ」
 仕方ないよ、と恋次の穏やかな微笑が見下ろしてくる。
 それへうなずき返しながら、龍太は大きな瞳に名残惜しい色をにじませた。
「……一緒に大きくなったのに」
 そんな言葉がぽろりとこぼれ落ちる。
 と、温かな手のひらにそっと頭をなでられた。
「これからも大きくなるよ、龍ちゃんと一緒にね」
「でも、せっかくトクベツな夜なのに、ちょっと淋しくなっちゃった……」
 そう、トクベツな夜。
 これからもずっと、こんな夜をともに作っていけると思っていたのに。
 それまで当たり前にあると思っていたものが、なくなって、けれどいつしか、それがまた当たり前の風景になっていく。これまで、自分はいったいいくつの当たり前の風景を作り変えてきたんだろう。
 幹に、そっと手のひらを添える。ざらりとして、温かな木肌。慣れ親しんできたその感触が、この手のひらから伝わってくる。それでも胸からあふれてくる気持ちには足りなくて、龍太は幹に自分の額を押しつけた。
 つかの間蘇る、懐かしい時間との邂逅。

 物心ついたときからここにあった。
 恋次や近所の友達、妹、弟と毎日登って遊んでは、この体のあちこちに擦り傷や引っかき傷を作っていたものだ。
 あの頃は枝の上に座っても、まだ1階の屋根にも届かなかったのに、いつのまにか2階にある自分の部屋まで届くようになっていた。

 龍ちゃん、と恋次の優しい声音が背中に降りかかる。
「トクベツはこれからだよ。それに、今年は――」
 ポキ、と小枝の踏み折られる音が、そのとき静けさの中に響いた。
 龍太は、はっと身体を強ばらせてそちらを振り返る。
「恋ちゃん、誰かいる……」
 無用心だ、と話していた折だ。もしや本当に不審者が、と大きな瞳で険しく睨みつける龍太の頭上で、しかし恋次の涼やかな笑い声。
「恋ちゃん……?」
「ん、驚かせてごめんな、龍ちゃん」
 くっくっ、とまだ笑いを噛みながらの恋次に腕を引かれ、音がやって来た方へと歩み寄る。
 やがて木陰から現れた人影を目にし、龍太はぽかんと口を開けた。
「……麻季( あさき )?」
 外灯に照らされたすまなそうな表情は、日頃高校で仲のいいクラスメイトの女子、穂積麻季。
「うん。ごめんね、恋次くん。うっかり音立てちゃって……」
 どういう意味だろう、と今の言葉の意味を解く前に、ノースリーブから伸びた彼女の細くしなやかな腕が夜風の中ひどく華奢に見えた。

 ……あれ、麻季ってこんなにかわいかったっけ。

 これもトクベツな夜の魔法なんだろうか。そんなことを思ってまじまじと見つめていると、
「俺もいるんだけど」
 その後ろからもうひとりが顔をのぞかせた。音なく近づき、穂積の隣にスッと立ち並ぶ様はまるで猫だ。
「……直也?」
 やはりよく見知った相手。制服姿の方が見慣れているからといって、見違えるわけはない。人見知りで、自分の気持ちに不器用で、だからこそ目が離せない。高校に入って一番に友達になったその人、入倉直也。
「おう」
 当然のように、うなずく相手。
 それでも不思議な違和感が目の前に漂って消えない。
「……二人とも、こんな所で何してんの?」
「……何って……祝いに来たんだろ」
 目の前の顔が呆れたようにつぶやいた。
 トクベツな夜なんだろ、と直也の言葉に、龍太はようやく今の状況を飲み込む。
 が、何かを言おうとする前に、再び恋次の涼やかな声音にこの場をさらわれた。
「さ、行こうか、龍ちゃん。間に合わなくなるよ」



☆ ☆ ☆



 涼しい夜風を供に連れ、四人がやって来たのは龍太の家から徒歩3分の川原。
 下町の風情残る景色を包む夜空には、満天の星が輝いていた。
「うわ、綺麗……」
 その煌めきの下、穂積が思わず、といったように腕を伸ばす。
「東京なのに、こんなに星って見えるんだね。知らなかった」
 隣で直也が黙ったまま同じ星空を見上げている。
 二人の後ろで、龍太もまた輝く小さな宝石たちを見つめた。
 無限に広がる闇から届けられた贈り物。本当ならば、すでに過ぎ去った時間。確かに自分は「今」ここに立っているけれど、この目に映るあの瞬きは過去の光。
 夜は、それだけで特別な空間だ。現在と過去が優しく溶け合っている。
「龍ちゃん」
 呼ばれた声にすぐ隣を仰げば、優しい微笑がそこにある。
「16歳の誕生日、おめでとう」
「あ……もう、0時になった?」
「なったよ、ほら」
 恋次がペンライトで自分の腕時計を照らす。
 ぴったり重なった長針と短針の先が、やはり星空を指していた。
 夜風にあおられる髪を指で梳きながら、龍太は目を細める。
「ありがとう、恋ちゃん」
 そばの柳も、「おめでとう」と祝福してくれるかのようにそよそよと枝葉を揺らしている。
 その葉ずれの音と重なり合うように、友人の声が響いた。
「龍太、おめでとな」
「ハッピーバースデー! これ、あたしたちからだよ」
 穂積が紙袋を差し出している。
「直也と麻季から?」
「まあね」
「たいしたもんじゃねえけどな」
 二人はちら、と一度目を合わせると、揃って仲良く肩をすくめた。
「へえ、なんだろ……開けていい?」
「おう」
「もちろん」
 プレゼントの包みを破る瞬間のこのドキドキは、いくつになっても変わらない。心逸らせ紙袋を開けば、中から顔を出したのは……
「あ、Tシャツだっ!」
 Tシャツが2枚。薄闇の中じっと目を凝らせば、どちらも星柄のプリントが散りばめられたデザインのようだ。
「これ、色違い?」
「うん、入倉が絶対青だ!≠チて譲らないんだもん。あたしは絶対、黄色!≠チて思ったんだけど」
 結局、2枚とも買うことにしたのだ、と穂積がまた肩をすくめる。
 隣で顔をしかめた直也と穂積とを見比べ、龍太は恋次と二人、同時に吹き出した。店の中で彼らが言い合っている様子がありありと目に浮かぶ。

 ……やっぱり、直也と麻季だ。

「二人ともありがとっ! どう、どう、似合う? なあ、直也!」
 張り切って2枚のTシャツを胸にあてて見せたが、返ってきたのは「暗くてよく見えない」と、なんとも虚しい答え。
 龍太は大げさなまでにがっくりと肩を落としてみせた。
「……こういうときはお世辞でも似合う≠チて言うもんだろー」
「冗談だよ。そう思うから買ってきたんじゃねえか」
 わざわざ言わせるな、と直也が吐き捨てれば、隣の穂積が呆れ半分おかしさ半分の表情で声を上げる。
「入倉ね、もっと素直になれないの? そんなんじゃ、これから彼女もできないよ」
「うるせえ、穂積。だいたい、なんで龍太のことからそんな話になるんだよ。俺は女なんか興味ねえ」
「ちょっと、目の前にれっきとしたかわいー女の子がいるってのに、女なんか興味ねえ≠ニは何よ。聞き捨てならない」
「どこにかわいー女の子≠ェいるって?」
「だから、目の前にいるでしょ」
「あ? 見えねえな」
「あーーーもう、あんたって、ほんっとかわいくないっ!」
「お互い様だろ」
 教室の中と同様やりあう二人を、龍太も今は黙って眺めた。
 去年までは恋次と二人きりだったこの瞬間を、今年はこんなふうに過ごすことになるなんて一年前には想像もしていなかった。一年後はもちろん、二年後、三年後……十年後だって、ずっと同じ夜が続くような気がしていた。
 どこかくすぐったく感じるのはなぜなんだろう、と龍太は指先で頬を掻く。
 隣を仰げば、穏やかな横顔がある。微笑ましいように、彼らの様子を眺めている。やがて、じっと見られていることに気づいたのか、その優しい視線が下りてきた。そうして、わずかに小首を傾げる。
「どうした? 龍ちゃん」
「うん……」
 うなずいて、龍太はもう一度頬を指先で掻く。
「楽しいなーって思って…………さっきはさ、ちょっとだけ淋しかったけど……こんなふうに変わっていくのも悪くないなって…………そう、思った」
「ん……龍ちゃんも成長したな」
 ぽん、と頭の上に大きな手のひらがのる。
 変わらないその幼なじみの仕草、温もりに龍太は屈託なく瞳を細め、笑顔を咲かせた。
「だって、16歳だもん! 俺、恋ちゃんより半年もお兄ちゃんなんだからさ」
 そこに、ようやく口ゲンカを終えたらしい穂積と直也が会話に参加する。
「あたしもとっくに16歳だよ。4月生まれだもん」
「俺も6月だから……ってことは、まだ15歳なのは恋次だけか」
「わ、それって意外。どう見たって一番落ち着いてるのにね」
 まじまじと並んで見上げられ、自分では歳相応のつもりなんだけど、と恋次がたまらず苦笑した。
「でもさ、7月7日が誕生日なんていいよね。ロマンチック。七夕かあ…………あ、でも、今はまだ7日の朝ってことだから、七夕の夜ではないのか」
 そこで穂積が首を傾げる。
「ね、なんで? まあ、誕生日になった瞬間をお祝いしたいって気持ちはわかるけど、せっかくなんだから七夕の夜のほうがこうして星を見るには風情があっていいんじゃない?」
 そのもっともな問いに、龍太はにっこり笑って答えた。
「だからだよ」
「え、だからって?」
「七夕だから、その夜は織姫と彦星をお祝いするって、俺、ちっちゃいときから決めてるんだ!」
「……ふうん?」
 穂積と直也が顔を見合わせ、同時にまた首をひねる。

 ……そうだよね、恋ちゃん。

 ちら、と悪戯な視線を投げれば、隣の恋次は困ったようなおかしいような実に曖昧な表情を浮かべていた。
 織姫と彦星がいるのは、なにも空の上だけじゃない。すぐそばに、いる。今はまだ互いに川の向こう岸。でも、必ず近いうちにめぐり逢う。めぐり逢うと信じている。

 ……めぐり逢ったら逢ったで、ほんとはちょっとくやしいんだけど、さ。

 ちり、と胸のうちに覚えた切ない瞬きを振り払うように、龍太はまっすぐに顔を上げた。
「それに、天の川は空だけじゃないんだよ。ほら……」
 こちらの指さした先を目で追って、直也も穂積も、納得、とばかりにため息を漏らす。
 目の前を流れる川に、星が落ちている。
 街路灯や揺れる遠い街の明かりを映して静かにたゆたうそれは、まさに地上を流れる天の川。
 そう感じ入っている二人の横顔を見て、知らず自分もうれしくなる。
「ね、綺麗だろ」
「うん……」
 穂積がぽつり、うなずいた。ほかに言葉は要らないとでもいうように、ただ小さく。
 直也は隣で黙ったまま。ふと、その直也が顔を上げて振り返った。
「龍太と恋次、いつもこうやって誕生日を祝ってんだってな」
「晴れたらね」
「雨だったら?」
 雨の夜にはどうしてるんだ、と直也の問いに、龍太はまた隣を見上げた。

 ……恋ちゃん、話してないのか。

 今夜、直也と穂積をこのトクベツな夜に招待したのは恋次なのだろうが、どうやら全てを話したというわけではないらしい。ならば、自分の返す答えも決まっている。
「それは俺と恋ちゃんだけの秘密!」
「16にもなって秘密ごっこかよ」
 苦笑を浮かべて、また夜空を仰ぎ見る直也。
「……それにしても、ほんっと仲いいんだな、おまえら」
 つぶやく横顔が、どこか遠くを見つめている。いや、星を見つめている。過去の光を見つめている。
「……直也?」
 呼びかけると、少しの間を置いて、その顔がこちらを向いた。ほんの少し淋しげな穏やかな表情で、微笑んでいる。
 その目が、つ、と隣にすべった。
「ところで、恋次は龍太に何をやったの?」
「え?」
 唐突に訊ねられ、めずらしく恋次が驚いたように目を見張る。
「え、じゃねえよ。プレゼント、当然龍太にあげたんだろ? それともこれから?」
「恋次くんは毎年律儀にあげてそうだよね」
 興味を引かれたのか、穂積も先程までのしおらしい表情からは一転、何なに、と好奇心旺盛な顔で振り返る。
「あー……」
 恋次が目にかかる前髪をかきやりつつ、ちら、と一度こちらに視線を向けた。
「俺は、何も……」
「何も?」
「何もって、あげてないってこと?」
「うん、あげてないし、あげないよ」
 恋次の答えに、二人がまた顔を見合わせる。よほど意外だったのか、顔を見合わせるだけで言葉は出てこないようだ。
 龍太はくす、と笑いをこぼした。
「恋ちゃんは、こうしてここに一緒にいてくれることがプレゼントなんだよ」

 幼い頃からずっと、こうやって毎年変わらずにそばにいてくれる。
 その温もりが、プレゼント。

「ね、恋ちゃんっ!」

 この地球はまるで万華鏡。
 くるくる回って、夜空の星たちを煌めかせる。
 いろんな輝きを見せてくれる。
 そうして、日々世界は動いていく。世界は流れていく。

 新しい出会いを得て、変わっていく自分がいる。
 変わっていくことは悪くない。成長できるってうれしいこと。
 でも……

 ……でも、それも変わらないものがそばに在ってくれるから。

 毎年、
 変わっていくものと変わらないものとを一緒に確かめ合って、
 笑い合って、

 ……ああ、幸せだなあって思う。

 そんな時間が、何よりもかけがえのない贈り物になる。


 1年……12ヶ月……365日……
 地球は回り続ける。
 季節は巡り続ける。
 来年になれば、また7月7日の今日という日がやってくる。
 けれど、決して止まることない時間の上に立っている人間は、一日たりとて同じ日を過ごせない。

 だから、毎日が特別。
 毎日が新しい喜びに満ちている。

 だけど、もっと特別な日が一日だけある。
 自分がこの世界を照らすひとつの光となれた日。
 大切な、誕生日。

 16年前に生まれた小さなその光が、今この広い広い夜空のどこかの星に届いているかもしれない。
 それを考えると、うれしくてたまらなくなる。
 龍太はここにいるよ。
 こんなに大きくなったよって。
 思い切り叫んだら、その声は16年後、同じ星に届くだろうか。


「ね、直也と麻季は俺のこと、好き?」
「……そんなの当たり前でしょ」
「じゃなかったら、こんな夜中にここまで来るかよ」
 隣を見上げれば、いつもの優しい微笑が見下ろしてくれている。
 ずっと変わらない温もりが、ここに在る。
 当たり前のように、いてくれる。
 うれしくて、たまらない。
「へへ……俺も…………俺も、みんなのこと大好きっ!」

 龍太はここにいるよって、今叫んだら、ここにいるみんなに今届くんだ。

 ……ね、声だけじゃなくて、
 言葉だけじゃなくて、
 俺の気持ちもちゃんと届いてる?

 ありがとう。
 大好きだよ。

 愛してくれて、ありがとう――。


 星の光が降り注ぐ。
 回り続けるこの世界で、
 さあ、これからどんな新しい輝きに出会えるだろう。

 今宵もまた、満天の煌めきに逢えますように――。



 沖本龍太、16歳。

 愛して、
 愛されて、
 今この時を、生きてます。





☆ ☆ ☆

「あれ、ところでもうとっくに終電終わっちゃってるよ。直也たちはどうすんの?」
「あ、それなら平気平気。恋次くんのお家にお世話になるから」
「え、恋ちゃんの?」
「おう」
「道場の離れだったら構わないって、じいちゃんが言ってるんだ。どうやらじいちゃんは二人が駆け落ちでもやらかしたんじゃないかって、面白がってるみたいだ」
「か……っ? 直也と麻季が、か……っ!?」
「ちょ、恋次! そんなんじゃないって、ちゃんと説明しとけよっ!」
「そ、そうだよ、恋次くん」
「似たようなものだろ」
「「全然違うっ!」」
「……へえー、そう、ふうーん……」
「龍太も! なんだよ、その目。違うって言ってるだろっ」
「いやいや、俺は応援してあげるけど」
「…………こんなことなら来るんじゃなかったな」
「冗談だよ。あ、じゃあ、俺も恋ちゃんちに行くっ! 明日は日曜だし、みんなで朝までゲームでもして遊ぼうよ」
「そう言って、いつもまっ先に眠っちゃうくせに」
「ん? 何か言った? 恋ちゃん」
「いや…………ま、それじゃ、誕生パーティ、第2部と行くか」



End.
あ、甘酸っぱい……(*・∀・)
でも、とても気に入ってるお話だったりします。
「みんなは俺のこと好き? 俺はみんなのこと大好き!」
それが、龍ちゃんの原動力。

恋ちゃんのバースデー短編とも対になっているテーマなので、そちらも目を通してもらえるとうれしいです(*'-'*)

うーん……この直後も書いてみたいですね(・∀・)
それにしても、紅一点の穂積ちゃんがうらやましい……(笑)





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